交通事故による「むちうち」等の傷害の治療や後遺症・後遺障害で苦しまれている方のための情報提供サイトです。

交通事故に遭われた方のための総合情報サイト

交通事故の休業損害

1 交通事故の休業損害

休業損害は,交通事故に遭い,怪我をしたために働けなくなったことにより収入が減少したことにより生じる損害です。

2 主婦の休業損害

専業主婦の方については,収入の減少がないため,休業損害が生じる余地はないと思っている方もいらっしゃいます。

また,そもそも休業損害自体に思い至らない専業主婦の方も多くいます。

しかし,専業主婦の方についても,裁判所は,休業損害を認めており,多数の裁判で,専業主婦の方の休業損害が認められているのです。

専業主婦の方の休業損害は,すべての学歴,年齢の女性の平均賃金を365日で割って1日あたりの収入額を算出し,これに休業日数をかけて計算します。

ここで問題となるのが,主婦の方の休業日数の証明です。

怪我をして家事ができなくなってしまったことの証明は非常に困難です。

そこでよく使われる考え方が,通院日数を基にする方法です。

通院している時間は,間違いなく家事をしていないため,通院日数を休業日数とするのです。

ただし,通院治療に丸1日使うことは考えにくく,半日計算をすることもあります。

また,通院期間を基に,主婦業に支障を生じた割合を決めて算定する方法もあります。

例えば,6か月通院した場合,最初1か月は100%,次の2か月は75%,最後の3か月は50%主婦業に支障を生じたなどとしてそれぞれの期間ごとに休業損害を算出するとする方法もありますし,通院期間全期間を通じて50%主婦業に支障を生じたなどとして算出する方法もあります。

主婦業に支障を生じた割合を正確に算出するのは困難ですので,ある程度,概算で算出せざるを得ないため,交通事故に詳しい弁護士に依頼し,家事に支障が生じた事実を適切に数字に反映させてもらうことが重要です。

3 給与所得者の休業損害

給与所得者の場合,どれだけの日数休業したか,休業によってどれだけ収入が減少したか,勤務先の会社に証明してもらうことができます。

通常は,休業損害証明書を会社に作成してもらい,事故前年の源泉徴収票を添付します。

加害者が任意保険に加入している場合には,通常,作成された休業損害証明書と事故前年の源泉徴収票を提出することで,減少した分の収入に相当する額の休業損害が支払われます。

よく,有給休暇や傷病休暇等を利用したために収入が減少しなかった場合に,休業損害は支払われないと思っている方が多くいらっしゃいます。

しかし,この場合でも,事故に遭わなければ,その有給休暇や傷病休暇は他の機会に利用できたはずですので,そこに財産的損害を認め,休業損害が支払われることがあります。

給与所得者の場合でも,給与相当額がいったん会社から支払われ,加害者から賠償金が支払われた後に会社に支給された額を返還するとされているものがときどきあります。

このような処理がされてしまうと,給与の支払いあり,収入の減少なし,として扱われ,休業損害はないと判断されてしまう可能性があります。

少しでも心配なときは,交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。

4 会社役員の休業損害

会社役員の場合,年間の役員報酬があらかじめ定まっており,仮に休業したとしても収入が減少しないことがほとんどです。

そのため,保険会社からは,役員の休業損害は認められないと言われてしまうことが多く,実際にそのまま示談されている方も多いです。

しかし,会社役員でも役員報酬が減った場合や,役員報酬でない給料等が減額された場合には休業損害が認められる可能性があります。

また,会社役員の役員報酬には,労務提供の対価としての性質を持つ部分と利益配当としての性質を持つ部分とがあり,このうち後者の利益配当部分は,労務提供とは無関係に支払われるものとして,休業損害の対象にはならないと考えられています。

そのため,役員報酬のうち,労務提供の対価としての性質を持つ部分については休業損害が認められる余地があるのです。

ただし,労務提供の対価部分と利益配当部分との明確な区分けは非常に難しく,個別事情に応じて,減額された部分を立証する必要があります。

これらをしっかりと主張,立証するのは困難ですので,会社役員の方が休業損害を請求しようと考えるのであれば,交通事故に詳しい弁護士に依頼することをお勧めします。

5 個人事業主の休業損害

個人事業主の方についても,交通事故被害による怪我の影響により休業せざるを得なかったために収入が減少した場合には,休業損害が認められます。

しかし,個人事業主の方の休業損害については,休業の事実,収入の減少の事実,減少した収入額を証明するのが非常に難しいです。

まず,休業の事実については,主婦と同様,証明が難しいため,通院日数とするとすることがありますが,通院日をすべて1日分とできるとは限りません。

休業によって収入が減少したことを証明するためには,本来あるべき収入の額と実際の収入の額に差額が生じていることが必要です。

しかし,個人事業主の方の収入は,固定されていないことが多く,変動があることも多いです。

そうすると,収入の減少が休業によるものなのか,それとも,通常の変動によるものなのかの区別がつきづらく,過去数年分の収入に関する資料に基づいて主張,立証しなければならないこともあります。

さらに,過去数年分との比較で減収自体は立証できたとしても,結局,休業がなかった場合の収入額は推測にすぎず,ある程度確実といえる額しか休業損害として認められないということもあります。

個人事業主の方の場合,確定申告書が収入の資料となりますが,中には,確定申告をしていない方や,多額の経費を計上しており,実質収入よりも低額の収入で申告している方もいます。

裁判所では,確定申告していない以上,申告する必要のない程度の収入しかなかったのだ,低額の収入で申告している以上,その額の収入しかないと認定されても仕方がないという考え方を示されることが多いです。

しかし,そのような場合でも様々な資料を基に主張,立証を尽くすことで,休業損害が一部認められることもあります。

このように立証の難しい個人事業主の休業損害については,個人で対応することは非常に困難であり,交通事故に詳しい弁護士に依頼したほうがよい結果が得られることもあります。